自分たちでMr. Brainwashのフレーミングをやってみた


お盆休みという訳ではないのだが、暑い日が続いて、しかも冷房の無い我が家では自分自身はともかく、冬は軽快に動いてくれるMac Book Airが暑さでアップアップで作業効率が悪いこともあり、ブログの更新もちょっと滞ってしまった。

アート関係の仕事をしているにもかかわらず、作品を沢山見るが、部屋が狭いこと、引っ越しがあったことなどもあり、作品はあまり所有しているわけではない。いつもそのうちそのうちということになってしまっている。まあ少しずつということで。

ただ、昨年のマイアミのScope Art Fairで、会場全体を作品で埋め尽くしていたグラフィティアーティストのMr. Brainwashと会場で毎日(アートフェアは来る人は1日だが、ブース内にいると搬入含めると4、5日も会場にはりつくことになる)顔をあわせては話たりしていて、その場で刷っていてたヒッチコックをモチーフにした200のエディションプリントをもらったのを、家に放置していたのを額装することにした。Mr. Brainwashはロスに住むフランス人で、バンクシーやシェパードほどメジャーではないが、マンハッタンを歩けば、このヒッチコックや、アインシュタイン、ウォーホールのパロディ作品など彼の多くのグラフィティが見れる。もらったのは200枚エディションに彼がサインを入れ、いくつかの色のスプレーをその場でスプラッシュしたもの。

昔、一度だけ写真のマットボード作成のワークショップに参加したことはあったが、僕も妻ももちろん額装の中身なんかは知らないが、まあ、見よう見まねでやってみようということで、まずは作品のサイズを測って(35X25インチ、89cmX64cmと割と大きい)、25丁目と6アベニューのガレージを利用して週末だけやっているアンティークのフリーマーケット(売っているのは基本的にはいつも同じ顔ぶれ)に行ってみた。アクセサリー、古着、古いプリント、家具、小物などにまぎれて、1、2軒古い額や絵を売っている店があるのだが、じっくり見て回って、額専門ではなく、何でも屋の壁に一つサイズが良さそうで程度もいい額を見つけた。値段を聞くと先週は150ドルだったが、今日なら85ドルだとかいうので、お、来たなと思って、少し話したが、その日はどちらにせよお金を持っていなかったので、来週また来るよといってその場は分かれた。彼はこういう商品は動きが早いから来週あるかどうかわからないよとか言っていたが、はいはいという感じ。いろいろ他の店などを見て回ってみて、まあ価格はかなりいいことがわかって、次の週、もう一度、今度はお金を持っていって交渉の末70ドルで額を買って持って帰ってきた。実はこの額は僕も妻も、一目見てとても気に入ってしまった。木製に金色の塗料が塗ってあり、きれいに古くなっているというか、ピカピカしておらず、鈍い色、壊れているところはなく、シンプルに見えるが、角の細かい造作もしっかりしている。


さて、作品と額がそろったところで、他に何が必要かとネットを調べたり、作品を持っている人にきいたりした結果、まずは、作品を貼って額に取り付けるための木の板が必要ということで、近所の材木屋で1/4インチの厚さのベニヤを額の内側のサイズである26インチX38インチに切ってもらって買ってきた。材料が9ドルで切り代が2ドル。

紙の作品の大敵は酸ということで、もちろん直接木に作品を貼るのはよろしくないということで、作品と木材の間に、ミュージアムボードと呼ばれる中性の厚紙(これは近くの画材屋では切ってくれないので、大きめのを買って、家で四苦八苦して切る)5ドルと、画材屋の店員と相談して、後々剥がせるタイプの中性両面テープで作品を固定することにした。テープも5ドルくらい。これに、額の後ろに渡るワイヤー(1ドル)、壁に取り付けるフック(3ドル)を買ってきて、1日がかりで汗かきながら、ミュージアムボードを切り、それをベニヤ板にはりつけ、その後かなり慎重にしっかり中心をあわせながら作品をミュージアムボードに貼る。そしてそれを額に取り付けて、小さめの釘6本で額に取り付ける。最後は、ちゃんと水平になるように、水準器が無いので、糸に重りをつけて垂らしその糸に直角になるように水平線を出してフックを取り付け、ついに額を壁にかけることができた。作品の周りにマットをつけたり、アクリルで作品を保護したりというやり方もあるが、僕も妻も、メトロポリタンでのフランシスベーコンのペインティング上のアクリルでさえ気になってしまうくらい、ガラス板、アクリルのあの反射があまり好きではないので、作品保護の観点ではあまりよくないだろうが、作品むき出しにすることにした。

アートフェアや、ギャラリーの展示などを横で見ていたり、実際に手伝ったりすることもあるが、額装から自分でやろうと思うと簡単そうで、いろいろ考えないといけないことに気づく。水平一つ出すにしても、フェアなどではみんな水準器を使っているのだが、自分の家には無いので、はてとなったり、ただ、こういうのも含めて仕事ではない作業というのは楽しいもので、作品への愛着につながったりするような気がする。この大きな額を入れても総額100ドル未満で全て済んだ。額装をしようと決めてからは、美術館に行ってもギャラリーに行っても、どういう額に、どうやって取り付けていて、額をどういうふうに壁にかけているかばかりに気が行くようになってしまった。今回思ったのは、アメリカや特にヨーロッパには、このような古い額が大量に残っているということ。あるものは絵と一緒にあるものは額だけになりながらも、何百年も前から作り続けられてきたこれらの額、そして絵の総量を考えてみたらなんだか目眩がしそうだが、それらがこうやって週末のフリーマーケットでリサイクルされて残っていっているというのもなんだかいい光景だ。

日本では、日本画なので、額のかわりに、襖絵や、掛け軸の装丁が古くからなされているため、額そのもののストックはあまりないので、そもそも古い額を単体で見ることがあまりない。これを機に額をよく見るようになって、つくりの精巧さなどに結構驚くことも多い。見たことがなかったものだからこそ、惹き付けられるし、自分達で額装を完璧で無いにせよ最初からやってみたことでどれもこれも単純だが学んだことは多い。そういえば最近手を動かしてなかったなあと感じた。

アメリカやヨーロッパから古着だけでなく、古い額の輸入をしてもいいかも。

皆さんも、作品を買って、額装もやってみるのも楽しいですよ。

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