どうすればデジタルでユニークピースが作れるのか？

- August 04, 2009

Photo: Aneta Glinkowska

今日は、全然まとまっていないし、答えもないが、よく考えることについて、下記散らしてみる。

最近、といってもここ１−２年、アートフェアをやったりしたせいもあって、若いアーティストやその周辺の方から、相談を受けることがある。そして、結構多いのが、デジタルメディアで作品を作り上げるアーティストがどうすれば、コマーシャルギャラリーでそれを扱ってもらえて、販売でき、うまく流通していくのかというようなもの。

ビデオアートはもちろん、最近はペンやブラシで描くよりも、マウスやタブレットで描くほうが身体的に自分にフィットするのでということでドローイングを全てデジタルで作り上げるアーティストも多いようだ。そこで、問題はじゃあ、売り買いがしやすいアウトプットのモノとしてのアート作品をどのようにしあげるかというところ。

この質問は、本来的にはギャラリストに聞くべきだろうが、多分答えはバラバラだろう。これはとても難しい問題だ。一方で、「アートとデザインの大きな違いは、自分の表現の発揚としてのアート作品と、クライアントと共に作り上げていくのがデザイン。」とかいう声があって、技術革新とともに、自分に一番あった一番面白い表現方法、制作方法としてデジタルを見つけてしまった若いアーティストが作品を作って、気がつくのは、デジタル作品をデジタル作品として見るのが一番いいけど、売り買いはしにくいなあ、どうやってアウトプットする（パソコンから出す）かなあ、DVD？プリント？？？みたいなこと。

そもそもエディションって名前の知れている作家のものなら、廉価版的に意味があるが、そうでない場合、エディション作品でキャリアをつくっていくのは結構大変だと思う。そこで、結局、最終アウトプットのどこかであるひねりをいれることで、うまくその作品をユニークピースたらしめないといけない。このユニークピースであることって、案外難しくて、いや、これプリントなんですが、エディション１なんでユニークですという宣言はなんかあまり説得力がない。これは作家作家で生み出していく必要のあることだろうが、最後に実際の手を使うか、材質にこだわって、一点しかないようなもの（どこかで拾ったとか、古くてこれしか残ってないとかなんとかかんとか）にアウトプットするか。

なんとなく、ヒントになりそうなことを下記に。

ちなみに村上隆のペインティングは構図などはデジタルでつくられ、それを多くのアシスタントが正確無比にペイントすることでユニークピースたらしめている。絵の裏側にはペイントしたアシスタントの名前がずらずらっとクレジットされているとどこかのミュージアムトークで聞いた。これは結局手でペインティングに仕立てる感じ。

上の写真がそうだが、ギャラリーが並ぶチェルシーのストリート上で、タイプライターで詩を書いて売っている人がいる。タイプライターってよく考えたらその場で売っちゃったら完全にユニークピースになる。これってタイプしたものをあとで展示で見てもあまりユニークピースだとは感じないんだけれど、実際に目の前でタイプしてそれをハイと渡されるとそこで完全にユニークピースになるような気がする。これは行為／制作を見せる、付け加えることかなと。

ソーホーには天気がよければたくさんのアーティストが作品を並べて売っている。ペインターの人は絵を並べたり、キャンバスだけはずして持ってきていたりしている。その中で、そこを通る人々のポラロイド写真を撮っている人がいる。単純にポラロイドだと観光地でのそういう人達と変わらないが、彼の場合、ポラロイドで客のポートレートをソーホーの古めかしい建物をバックにとって、ポラロイドのエマルジョンを剥がして彼独自のテクニックで古めかしい厚手のマット紙かキャンパスだったかなにそれを定着させてアンティーク写真のように作り上げる。これはポラロイドという一点性を感じさせる材料にひとひねり加えたユニークピース。

時代が、アナログとデジタルの狭間にあるので、アートもメディアも試行錯誤するしかないかと。