Francis Cunninghamのサマーハウスを訪ねる






ブログが1週間もあいてしまった。先週の後半は夏休みということで、知り合いのペインターであるFrancis Cunninghamさんのマサチューセッツ州にあるサマーハウス/スタジオにご厄介になって、ゆっくりすることができた。ニューヨークから北に200キロほどで、車で3時間程度行ったところのSheffieldという地域。上の写真にもあるように、森と畑からなるすばらしく美しい田園地域。アメリカというと、自分が知っているNYのような大都市か、あとは映画で見るような、郊外の住宅地、もしくは西部の荒野みたいな風景しか思い浮かばなかったが、本当にこれは日本で生まれ育った自分にとっては全くはじめてで、しかもアメリカというイメージもうちやぶる驚きだった。彼は基本的にはNYに住んで絵を描いているが、60年代に、ここの元農地を購入して、農家の古い納屋をここに移築してからは、夏にはここに滞在して絵を描いているそうだ。上の写真は全て敷地内、森と草原で何も無いが、アメリカは広いなあと思わされずにはいられない。住んでいるのも納屋というものからイメージするよりずっとすばらしく、木製できれいに古くなった納屋で、中に入ると天井高は6メートルくらいはあり、一部をスタジオにしてある。200年以上前の納屋のようで、柱は槍鉋で削られた手の感覚が残っている堅牢なもの。

このあたりは、トウモロコシが有名な田園地域だそうだが、最近廃業する農家が多く、農家が廃業するたびに、広大な土地がNYの金持ちに買われて、最近は立派な別荘がどんどん建っているそうだ。そういう事情もあり、一見するとのどかで、辺鄙なところだが、夏になると、近くでバレエやコンサートが開かれたりもする。

彼は、所謂アカデミックなペインターで、作品はこちら、最近スタートしたブログはこちら。ちなみに、彼のブログ運営を妻がやっているのが切っ掛けでこのサマーハウスに呼んでもらえた。「カラー・スポット」というテクニックで、簡単にいうと、風景や人体を目で見て、線ではなく、色のグラデーションで視覚をとらえて、超リアリスティックで巨大なペインティングを描いていくというもの。静物、風景、宗教画、そしてヌードをほぼ実物大で描いていて、コマーシャルギャラリーで成功しているわけではないが、ブルックリン美術館にかつて併設されていた学校や、アートスチューデントリーグというアートスクールでペインティングを長い間教えてきた。彼の時代には、特にアメリカということもあるだろうが、ヌードを描いているというだけで、とても批判され、苦心してきたそうだ。若い自分たちには、その辺の感覚はわかるようでなかなかつかめない。今でも、最近までヌードのペインティングをウェブにあげるのをためらっていたそうだ。

この家には、インターネットはしっかり通っているが、今回は夏休みなので、パソコンは持ってこなかったし、来てみれば、携帯も自分の契約しているT-Mobileはこのエリア全域で全く通じなかった。久しぶりに完全にoff-gridの状態で、こんなにすばらしい自然に囲まれて、ゆっくり本を読んだり、散歩したり、彼の長い人生のほんの少しを聞かせてもらったり、もちろんアートについて話したりすることができた。

ギャラリーや、美術館で、本当に多くの、様々な世代のアーティストによるアート展覧会が目まぐるしく変わっていくのを見続けている、アートが目の前を流れていく感覚と、アートの歴史が体内に蓄積されたこの老年のアーティストとほんの数日だが、ゆっくりと過ごして静かにアートをとらえる感覚は、本当に全く違う。現代に生きる身として、どちらがいいというわけではなく、両方の感覚をしっかりとコントロールして両方でアートに接していかないとなあと感じた。日頃、メール、ウェブ、会話、twitterであふれんばかりのアートの情報に身をさらして、そして数多くのアート展覧会であふれんばかりのアートに身をさらしている。それにくらべればほとんど時間が止まっているかのような空間に身を置いてみることで、気がついたり、感じたりすることはとても多かった。目と頭とそして全身でアートをみることができたような気がする。

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