Momusからこたつ派について教わる


昨夜は、SOHOの僕たちのアパートのすぐ近くのHiroko's Placeという、NYで日本人がやっている日本で言うところの洋食を出すレストランで、モーマスとはじめて話した。僕は1978年生まれで、僕が中高生のときには関西の僕の高校でも渋谷系が大人気で、それほど音楽を知らなかった自分でも名前は聞いたことがあるというミュージシャンとして日本では有名な人だが、数年前に彼がNYに住んでいるときにブログでTABのことを書いてくれたことがきっかけでアートの文脈で彼を知るようになった。ちなみに今日現在の日本語のwikipediaによると。

モーマス(Momus、本名ニック・カリー Nick Currie 1960年2月11日-)はスコットランド、ペイズリー出身のミュージシャン。芸名はギリシア神話に登場する皮肉・あざけりの神モーマスに由来する。幼少期をギリシャのアテネ、カナダのモントリオールで過ごし、母国の大学で文学を学ぶ。学生時代にバンドThe Happy Familyを結成。のち、ソロとしてのアルバムを発表する。ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京などを転々とし、現在はドイツのベルリンに拠点を置く。文筆家としても活動し、Wired magazineや Vice Magazine、Design Observerなどへの寄稿でも知られる。日本ではカヒミ・カリィや猫沢エミ等に楽曲を提供。渋谷系としてカテゴライズされることもある。


文筆以外にもパフォーマンスアーティストとしての活動もしていて、2006年のWhitney Biennialに参加していたし、今、NYに来ている理由はチェルシーのZach Feuer GalleryでAki Sasamotoと二人で"Love is the end of Art"という2週間にも及ぶパフォーマンス展覧会をしているからだ。横浜トリエンナーレにも参加していた日本人アーティストのAki Sasamotoと2人で平日は4時間、土曜日はなんと6時間もギャラリー内でパフォーマンスをし続けるもので、コマーシャルギャラリーの展示としては異例のものだろう。今週末までなので、機会があれば是非。オススメ。

この展示を見て面白いと薦めてくれたTABlog英語版の旧編集長で、現在Art Asia Pacificの編集をやっているAshley Rawlingsが僕と、妻をディナーに呼んでくれてはじめて対面することになった。お互いにオンライン上では長い間知っていたが、初めて話をして、当然のことながら日本のアートシーンの話になった。

彼「最近NYのアートスクールに来る日本人が減っているらしいが、本当かな?」
僕「数字は知らないけど、日本からの留学生の総数自体はどんどん減っているそうだ。NYの大学に行っている人の間でも、日本人が減って、韓国人、中国人、台湾人がとても増えていると聞く。」
彼「会田誠などのKotatsu Schoolの影響はあるかな?」
僕「Kotatsu School???」

あとで、調べてみたところ、1997年にミズマアートギャラリーで会田誠がキュレーションをした展覧会が「こたつ派」という展覧会で、ここからきているようだ。僕はこの言葉を不勉強ながら知らなかったし、多分、所謂アートムーブメントや、アーティストコミュニティーをさす言葉としてはそれほど定着しているとは思わないが、これは結構言い得て妙だと思った。展覧会のプレスリリースから抜粋すると、

今展の「こたつ」は「欧米の規範への恭順を強いる現代美術」と、その対極にある「不自然な伝統回帰」双方への違和感の象徴として使われます。それは生活と創作が乖離しない、こたつのような自然体な創作態度にしか文化の成熟は望めないという、会田の確信がこめられています。


これは、ネット上で少し前に話題になった「日本はもう立ち直れない」 だから「海外で働こう」論争への僕の違和感の説明につながりそうだと感じている。この論争は旧来の日本/海外(欧米)という軸と、もっと新しい「世界中の多極化」と、「絶対多数である海外に行かない人々の多極化へのリアクション」という2つの別の軸がからまっているようで、なんともすっきりしなかったのだが、この「こたつ派」というのがこれを考える切っ掛けになりそうだ。もう少ししっかり頭をまとめてここについて書いてみたいと思う。

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