101 TOKYO 2009 総括



4月の頭の101 TOKYOが終わり、4月の末にはNYに帰ってきてあっという間にもうすぐ6月というところで、101 TOKYOからも正式に結果報告プレスリリースも配信されたこともあり、2008、2009年両方の運営に携わった者として総括しておこうと思う。(なかなか筆が進まず、遅くなってしまった。)

セールスとしては、2008年が約30のギャラリーが1億円売り上げたのに対し、2009年はほぼ同数の30のギャラリーの参加で、具体的な数字は公表していないが、前年度に対して低調であったとのこと。(あくまでこのセールスというのは各ギャラリーのアート作品の売り上げの数字の総額で、アートフェアとしては入場チケットセールスと参加ギャラリーからの参加フィー、スポンサーからの協賛金が収入で、上記の所謂フェアのセールスというのはよく誤解をうむ。)同時開催のメインフェアであるアートフェア東京が昨年と横ばいの10億円というレポートを出しているが、この数字をそのままうけとっても、フェア自体の床面積、参加ギャラリーが増加したことを考慮すれば、両フェアとも昨年割れというところだ。昨今の経済事情や、世界中の他のアートフェアー、オークション、ギャラリー/美術館のリストラなどのニュースを考慮に入れると、東京もやはり世界の情勢の影響は免れないという結論だろう。

ただ、具体的な数字はないものの、フェア運営者として気がついた2008年と2009年の大きな違いというのは、他のアジア諸国からのコレクターが格段に減ったということだ。自分の経験、アート関係者との会話の中ででたのが、東京のアートバイヤーが買わなくなったというよりは、ここ数年急増していたアジアのバイヤーが急減したことだ。国別に見ると、国内のアートマーケットが大きく冷え込んでいて、対円でウォンが下落した韓国のコレクターがめっきり減り、また、オリンピックも終わり、高止まりしていたポップペインティングの熱が冷めてアートマーケットが一段落したとされる中国からのお客さんも少なかったようだ。唯一健闘していたように見えるのが、5月中旬にもYoung Art Taipeiという新しいコンテンポラリーアートフェアーがはじまった台湾からのバイヤーだろう。そういう意味では東京は、もちろん不景気の影響は多少あるだろうが、新しいコマーシャルギャラリーもまだまだ増えており、閉めるギャラリーの話も聞かないところを見ると、まだまだ小さいとはいえ底堅く成熟してきているように見えるし、実際そう感じることが多かった。

101 TOKYOの運営の中身の大きな変化としては、印刷、会場設営、会場運営などの大きな部分をイベントプロダクション会社であるLufasに外注した点だろう。2008年は、初年度ということ、運営資金がかなり限られていたこと、会場が廃校という特殊な場所だったことなどから、若いボランティアスタッフを中心に自分たちも含めていわゆるアマチュアが多数で作り上げたフェア運営だったのに対し、今年は事務局メンバーは実質2−3人で、あとはLufasが実働的な部分を担った。そのおかげで、会場自体のつくり込みがかなりプロフェッショナルなものになり、一見してのフェア運営のクオリティはかなり上がったのではないかと感じた。もちろん、昨年のインディー感のあるフェアが良かったという声も多かったが、フェアを持続していくという観点からは、ボランティア中心、アマチュアメンバーの手作りフェアを続け、インディー感を何年も持続するというのはかなり困難なことだろう。実際に参加フィーをはらって参加しているギャラリーとしては、売り上げが良かったところも、それほどでもなかったところもフェアへの満足度はかなり高い様子ではあった。

フェアのプログラムに関しては、パネル4−5人に登壇していただいてフリーディスカッション形式(よくあるプレゼンテーション形式ではなく)ですすめた101 QUESTIONSがかなり好評で、連日満席、立ち見という状況の上、アート関係者の生の声が聞けるということで登壇者の方からの評判も良かった。海外からパネリストを呼んだり、同時通訳を入れるということで金銭的には安くはないものの、フェアの一つの意義としては重要なプログラムだ。またアーティスト・プロジェクトの101DISCOVERIESが売り買いの場として静的な空間になりがちなフェアを、オープニングだけでなく会期中様々な時間帯に、さまざまなパフォーマンスで補完的に満たしてくれたことで、フェア会場をアートが起こっている場に換えてくれたのはすばらしかった。

フェアの今後の課題としては、まずサイズ。2008年、2009年とも参加ギャラリーが30くらいで、アートフェアとしてはかなり小規模な部類だと思うが、フェアとして適正に持続でき、健全に利益を出していくにはやはり少なくとも50-60くらいのギャラリー数が必要で、それにあったうまいサイズの会場を見つけていかないといけない。また、それと同時に今後数年同会場で開催できるようにもっていくことで、広報活動上のロスを減らすこと、会場設営のノウハウを貯めていくことが必要だろう。その上で通年活動できる事務局スタッフが置けるようになる必要もある。あとはアートフェア東京、オークションハウス、美術館などとしっかり連携をして、4月の頭は東京のアートウィークであるということをしっかり対外的に広報活動をすることで、海外からのお客、アート関係者を増やすことも必要だ。

自分が当分、居をNYに移してしまっており、なかなか長期的なコミットができない状況で歯がゆい気持ちではあるが、忘れないうちの簡単な総括として。
また、ここではできるだけ客観的にということで、関わってくださった皆様について言及していないが、101 TOKYOは東京のアートシーンについて親身に思っている多くの方の多大なご協力を得て今年も開催することができた。心からお礼申し上げます。

Comments

Popular posts from this blog

アートマネージメントよりアートアントレプレナーを!

アメリカを代表するミニマリスト桑山忠明氏へのインタビュー

About Kosuke Fujitaka