SCOPE Art Fair Hamptons に行ってきた


SCOPEアートフェアーは、3月のNYのArmory Showや、6月のバーゼルのアートフェアーなどと合わせてサテライトアートフェア的に開催されており、毎年6都市を廻っている。1年のうちの開催回数という意味では一番多いアートフェアーかもしれない。今回は先週末(7月24日ー27日)にニューヨーク郊外の夏の保養地であるEast Hamptonで開催されたSCOPEのメディア向けツアーに参加した。これは他の都市のSCOPEアートフェアーと違って、別の大きなアートフェアのサテライトではなく、SCOPE単体での開催。

Hamptonsは、マンハッタンの東側に位置するロング・アイランドという文字通り細長い割と大きな島(150キロくらい)のほぼ東端に近いところにあるエリアで、ビーチがずっと続き、ニューヨークのお金持ちのサマーハウスが立ち並んでいるエリア。マンハッタンから車、バス、電車で2時間程度のところにある。このエリアにスペースを持っているギャラリーもあり、夏の間はマンハッタンのギャラリーは閉めて、ハンプトンのギャラリーをあけるというかたち。アメリカ人はヨーロッパ人と違って、リタイアしていない限り、夏休みは1ヶ月以上というような人はそれほどいないだろうから、平日は市内で普通に仕事して、週末は毎週サマーハウスで過ごすというような感じの人も多いらしい。
12月にアートフェアーが行われるマイアミは避寒地で、やはりセカンドハウスが立ち並ぶところだし、お金持ちの移動にあわせてギャラリー移動まではできないのでアートフェアーを開催という形になっている。

僕たちはハンプトンに行ったことがなかったし、今年は夏休みを取る予定もなかったので、丁度良い機会とばかりに、アートフェアーに行った後、2、3日その辺でゆっくりしようと思っていたのだが、それが大きな間違い。前日に近くのホテルやB&Bに電話しまくるも、どこも一杯か、空いていても一泊$300とか。別にアートフェアがあるからというわけではなく、夏のピークシーズンの週末だから当然だとのこと。すると丁度プレビューの日にSCOPEの主催で市内のアートメディア向けの1日日帰りツアーをするという知らせを受けて、渡りに船とばかりに参加することにした。旅費も食事代もアートフェア持ちという僕らのような貧乏アートメディアにはありがたい企画。今年101 TOKYOを企画した身としては、ここまでやるのはすごいなあというところ。

10時半にペン・ステーションに集合。総勢15人くらいのアートジャーナリストが集まってみんなで電車に乗っていく。Artinfo.com, Artnet, artkrushなど自分たちも含めてやはりオンライン系のアートメディアの人が多く、みんなある意味競合者同士だが、和気あいあいと名刺を交換し、情報交換をする。特にいろんな人に会うことを勧められていて、スケジュールが会わなかったartkrushのPaul Lasterさんが偶然ツアーに一緒に居合わせたのは良かった。お互い、やっと会えたねという感じで隣の席に座ってアジアのアートシーンなどについて話した。

1時半についに、East Hamptonの駅につくと、ディレクターのAlexis Hubshmanが駅でメディア一行を出迎える。大きなバンとAlexisの車に分かれてレストランに移動。僕たちはAlexisの車に乗ったのだが、フェアディレクターがフェア開始直前にメディアの移動の運転までやって、なんというか全然違和感無かったが、よく考えたら、とてもカジュアルなフェア運営だなと驚いた。このカジュアルな感じがよくも悪くもSCOPEの特色といえば特色。

レストランは、ツアーからのメディアだけでなく、地元メディアや、前日入りしているメディアなど含めて30人くらいで、これまた名刺交換、アート情報交換をみんなそこかしこでやっている。海の近くということで、貝類がすばらしかった。最後のデザートの前くらいに、ディレクターのAlexis Hubshmanが簡単にフェアについて説明(写真上)し、それに対して質疑応答。ちなみに、Alexis Hubshmanは世界中6都市のアートフェアーのディレクターだがとても若く、多分30代前半。

5時のフェアー開始とともに、会場に移動。会場は飛行場近くの倉庫を改装してつくってある。

約40弱のギャラリーの参加ということで、小規模なフェアといえるだろう。ニューヨークのブルックリンなどの若いギャラリーなどが多いが、中にはヨーロッパからの参加もある。天井は高く気持ちがいいのだが、空調が故障したそうで、エアコンは無し。参加ギャラリーの人たちは会うたびに暑い暑いとこぼしていた。僕からすれば、クーラーがんがんで寒いフェアよりはこのくらいが丁度いいと思える温度だが、人が込んでくるとかなり暑いかもしれない。

日本と中国のコンテンポラリーを主に扱うEathan Cohen Gallery。日本人では篠原有司男さんのボクシングペインティングなどを販売。

チェルシーのアートタワー内にギャラリーがあるChina Squareのブース。ニューヨークでも盛り上がっている中国人現代アーティストによる巨大なペインティングが所狭しとならぶ。

ニューオリーンズからきたRed Truck Galleryはペインティングを壁中に敷き詰めるクラシックなサロンスタイルのブース。真ん中のテーブルではギャラリスト達がポーカーをやっている。保養地での小規模なアートフェアーということもあって、客も、ギャラリーもリラックスした雰囲気。

プレビューということもあり、会場では巻き寿司が出されたが、あっという間になくなる。

全体的によくいえばアートフェアプレビューの一種ギラギラした感じがなく、リラックス。悪く言えばちょっと活気がないかなという印象。みんなハンプトンにゆっくりしにくるのだが、やはりそれだけではものたりないというところに、アートフェアーでも行ってみるかというのりなのだろう。ハンプトンでは有名なイベントであるらしい。こういう事情もあって、ハードコアコレクター向けの作品というよりは、割ときれい目なペインティングが多く、値段も抑えめで数千ドルのものも多い。プレビューということで売れ行きは解らないが、その場で見ている分には、そこそこ売れ始めている感じはあった。

メディアツアー一行は会場には2時間程度いて、8時に出発するマンハッタン行き最終のバスに乗って帰る。バスはシートもゆったりとしていて、とても快適。バスの中では、一日を一緒に過ごしてすっかり打ち解けたジャーナリスト達がアートフェアの感想などを話し合う。まあ、大きな驚きもなく、こんなもんでしょという雰囲気。次の日にはNY Art Beatに写真レポート記事を載せ、入りきらなかった写真はFlickrに。

とても長い一日だったが、NY Art Beatのような新米アートメディアにとっては多くの他のメディアと知り合えたとても良い機会になったし、来年の101 TOKYOはどうなるか解らないが、アートフェアをやる側としてもいろいろと学ぶ機会になった。

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