運慶と村上隆

今年の3月末にニューヨークのクリスティーズで運慶作の木造大日如来坐像が12億5千万円で真如苑に落札されたときには、「日本の国宝級の美術品が海外流出を免れた。」、「海外でのオークションの日本美術作品の最高額。」とかで、日本のメジャーな新聞、テレビなどが大きく取り上げた。


その2ヶ月後に、同じニューヨークのサザビーズで村上隆のMy Lonesome CowBoyが16億円で落札されたときには、メジャーなメディアではさらっと流す程度、ブログなどでは、フィギュアに16億円なんて西欧人の考えることはよくわからんというような反応が多かったような気がする。

この2つの出来事を並べたときに、よく考えたら、少なくとも現時点で、村上隆の落札額が国宝級の運慶作品を上回っていること、さらに現在ブルックリン美術館で開かれている村上隆の個展に出ている彼の大作のほとんどの所有者が西欧人であること(高橋コレクションの所蔵作品が入っているのを除いて)を言い換えれば、国宝級の作品を上回る価格がついている日本人作家の作品の大半がすでに海外流出しているということでしょう。

私個人として村上隆の作品をとても気に入っている訳ではないのですが、それでも百歩譲ってこの2つの事柄に対する世の中的なリアクションは少しおかしいと感じました。
オークションはあくまで結果であって、その金額を説明するのは基本的にはそれを買った人にしかできないと思うのですが、美術作品だけでなく、日々食べている魚の値段も基本的にはオークション形式で価格形成されているわけで、マーケットを形作るかなり有力な方法なわけです。今回の結果、あるいはもう少し一般的なトップレベルの現代アート作品の取引価格について、少なくとも日本のメジャーメディアの文化欄を担当されている方はある程度受け入れた上で中身のある分析をしてもらえればなあと思います。

その中では、産経のこの記事は一番つっこんでいる気がしますが、文化欄担当の方がかいていらっしゃるわけではなさそうですね。日本の文化にとって大きなインパクトがある出来事だと思うのですが。

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