NYの”ストリート”アート


ここのところ、なぜか、グラフィティをはじめとするストリートアート系のイベントに参加する機会や、見る機会が増えた。金融のクラッシュでかしこまったホワイトキューブからストリートへの揺り戻しが来ているのかというのは少し深読みしすぎかもしれない。ともあれ、アート、ファッション、デザインなどカルチャー系のブログで一番人気なのが、NYのダウンタウン各地に描かれた巨大なネズミの”グラフィティ”だ。これはBanksyのNYでの新しいプロジェクトで、ソーホーのグランドストリート沿いに描かれている。バンクシーがスケッチを描いたのをプロが拡大したそうで、もう、これはグラフィティ(落書き)とは言えないかもしれない。


そしてこれが、たしか数日後に出現した同じソーホーでもハウストンストリート沿いのもの。実はこれらのネズミはどんどん増えているようで、数日前にすでに4つあるとのことだった。


このバンクシーの一連のプロジェクトの核になっているのが、グリニッジビレッジに10月頭にできた、ペットショップ。一見普通の昔からあるペットショップに見えるのだが、近寄ってみると、すべて単純な動きをする造形物で、人間との関わりあいで目にする動物達の形状(チキンナゲット、豹の毛皮、ホットドッグ、檻の中でテレビを見る猿など)が見せられていて、知らずに入って驚くという仕組みになっている。詳しくはflickrの写真、ビデオでご覧ください。NYにいらっしゃる方は見に行く方がもちろんいいですが。他のいくつかのグラフィティーというか壁画をもう少し見たあとで、もう一度これについては書きたいなあというのが今の気持ちです。初見としては、今までのバンクシーのストレートな切れ味があまりなく、手がこんでいて、もう一つ意図がつかみかねるというのが正直なところ。後述するWooster CollectiveというブログにBanksyからのメッセージが載っているので、どこまで本当かは置いておいて、”作家”の意図としてはこういうことだそうだ。


実は時期は前後するのだが、最初のストリートアート関連イベントは、10月1日に友人に誘ってもらって聞きにいった、DUMBOのGalapagos Art Spaceで行われたトークイベントで、ストリートアートのブログで有名なWooster Collectiveを主催する二人(Marc and Sara Schiller)と彼らお気に入りの2人のストリートアーティストであるJi LeeとCharlie Toddのプレゼンテーションだった。このイベントを主催していたのが、Young Benefactors of Americans for the Artsという新しくできたグループで、なんというか日本ではあまり考えにくいのだが、「芸術支援を考えているアメリカ人若手慈善事業家」の集まり(20−30代)だそうだ。ようはお金持ちのご子息ご令嬢達で、主催者は20代前半の女性でとても驚いた。ディスカッションの内容はとても興味深く、Wooster Collectiveが昨今のストリートアート事情を概説した後、Ji Leeが彼の代表プロジェクトであるThe bubble project(街のポスターなどに吹き出しを張っていくというもの)などの紹介をして、Charlie Toddが彼の代表プロジェクト(グランドセントラルに動かない人々がいて何かの合図で突然劇場チックに動き出すのを通行人が見て驚くというようなイメージ)例えば、こういうものなどを紹介して、質疑応答。二人とも、こういうともすれば違法になりかねないプロジェクトが評価されて、コミッションが来たり、Ji LeeにいたってはGoogleのCreative Labのディレクターの仕事が来たりという形で成功しているそうだ。


最後は、NYABlogに少しレポートをしたのだが、NYABのよきライバルで親しい間柄でもあるartlogというサイトが企画したWilliamsburgのストリートアートのツアーに参加した。このツアーのガイドは、Alex Smithという業界3番目のPhillips de Puryというオークションハウスでストリートアートの専門家として働く人で、自身もストリートアーティストだったようだ。20人くらいで回るのかと思いきや、100人以上が金曜日の夜のWilliamsburg(東京でいうと中目黒?)をグラフィティーを求めて、ツアーで歩き回ることになり、なんだかシニカルな状況でもあり、壮観でもあった。ツアーに参加して初めて分かったのだが、現状のストリートアートは、世界中にいるBanksy、Mr.Brainwash、Nick Walker、Shephard Fairey(Obey Giant)、Os Gemeosなどのスターアーティストがアシスタントグループとともに、飛行機やバンで世界中をどんどん移動して、各都市を爆撃(bombという言葉を使っていた)していくそうだ。地元のアーティストが夜にせっせとスプレーペイントでタッギングしていく一昔前のスタイルと違って、量産体制を周到に用意した上で、一気に何十もの作品を残していくやり方のようだ。大きなものの中には、ビルの持ち主からの了解を得ているもの、中にはコミッションされたもの、そしてバンクシーにいたっては別のプロのビルボード職人が描いているものまである。ここまでくると、”ストリートアート”とファッションブランドのビルボードの区別さえつかなくなってくる。グラフィティも場所を選べば(WilliamsburgやSohoなど)なんとなく社会的に受け入れらているもしくは歓迎されてさえいる存在になってきているようだ。もはやそして、さらっと冒頭で書いたがどうしてオークションハウスにストリートアートの専門家がいるかとえいば、もちろんそれらのアーティストの作品をオークションにかけているからである。NYのフィリップスで10月26日にストリートアートのオークションがある。どうしてもあなたの部屋も爆撃してほしい場合は、数千ドルから。とりあえずはオークションを見に行ってみようと思う。

Comments

  1. 見た感じ、ネズミはもうグラフィティと言うよりMural Artですね。。。

    そういえばNYでMuralってあんまり見ませんね。フィリーはMural描くのがコミュニティプロジェクト化してるのでそこら中にあります。

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  2. NYでは広告に使われることが多いですね。DKNYとかGrand Auto Theftとかの巨大な壁画が特にソーホー周辺にありますね。ネズミはもう一つよくわからないです。

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