マイアミのことなど


Photo: Aneta Glinkowska

12月の第1週目はマイアミのフェアに参加して、1日だけNYに泊まってスーツケースを入れ替えて10日には東京に帰って参りました。その後あっという間に2週間以上が経ちました。本当に早いです。忘れないうちにマイアミのことを少し。

盛り上がりでは間違いなく最高潮だった昨年に比べればかなりおとなしくなったとはいえ、主立ったフェアでも、バーゼル・マイアミ(メインのフェア)、Pulse(中堅)、NADA(若手)、Scope(若手)、Aqua(2カ所)、Bridge(2カ所)、Art Asia(アジア系)、Art Miami(モダン系)、Photo Miami(写真)、Design Miami(デザイン)、Red Dot、Artist Fair、ink Miami(プリント系)、、、と挙げれば20くらいはフェアが行われていたようです。


Photo: Aneta Glinkowska

僕たちは、NY Art Beat / Tokyo Art BeatでScopeのメディアブースを出していたので、1週間いたとはいえ、他のフェアをじっくり見て回るのはなかなか大変だったのですが、オープニングなどを中心に主立ったところは見て回ることができました。ちなみに、Scopeの様子NADAの様子はNYABlogにフォトレポートが上がっているのでご覧ください。

全体としては、やはりかなり厳しかったようです。フェアが出すラップアップレポートや、メディアのレポート記事などをさらっと見る限りはそれほど悪くなかった、中には至上最大入場者数とか言っているものもあるのですが、まあ、それはなんというかアートシーン的なやせ我慢でしょ。という感じ。もちろん、メインのバーゼルの中のグローバルに巨大なギャラリーなどは売れ行きはそれほど悪くなかったそうですが、それはそもそも去年とかだったら買いたくてもお金あるだけじゃあ買えなかった級の作品が、今年はフェアの2日目に行っても買えるようになったというような感じで、直接の金額には現れていないけれども、ある意味では売り上げ減一歩手前みたいな状況ですよね。メインのバーゼルでも日本を含む海外ギャラリーはかなり苦戦したようですし、NADAやScopeの若手ギャラリーもかなり売り上げは悪かったようです。

去年のマイアミに行っていないので実体験に基づかないのですが、まあ、多分、アートが盛り上がっているから来ていた周辺の金持ち、お洒落な人々(ファッション、セレブ系)や、カジュアルなコレクターが激減した、ハードコアなコレクターは予算を絞りながら、知らない作家ではなく、有名な固い作家を買っている。といったところのようです。

101 TOKYOの売り込みなどもしなければならなかったので、あらかじめメールや電話でコミュニケーションをとっていた主に若手の海外ギャラリー約30ギャラリーと話をしたのですが、ほとんどが来年は生き残りの年なのでコストがかかってリスキーな海外フェア(特に極東の日本なんか、、、)への参加は見送るとのこと。それらの会話の中でも面白い区分として、NYのギャラリーは来る前に「マイアミで売れたら是非101 TOKYOに参加したいと、すでに冷え込んでいるNYでかなりびびりながらもマイアミに淡い期待をしていたが、やっぱりマイアミでも売れなかった、、、。」という感じなのに対して、南米、ヨーロッパ、日本のギャラリーは来る前はそれほどアートが売れなくなっているという意識は大きくなく、マイアミが全然売れなくて大きなショックを受けているという感じだったようです。実際、日本に帰ってきてギャラリーの人たちと話していても、不況の影響はまあ無くはないかなという感覚で、NYの小さいギャラリーの人たちの切迫感はほとんど無いようです。当然のことで、そもそもレバレッジがかかっていず小さかった日本のアートマーケットは今回のことで2割減になることはあっても、半分以下になるというようなことは多分ないのでしょう。とはいえ、近年急増した日本のコンテンポラリーのオークション会社は、今年後半、のきなみ落札率が半分以下になってしまい、一気に苦しくなっている模様。

そもそも評判が良くなかったシャネルのモバイルアートが旅路半ばにして(香港、東京、NY)、今後のヨーロッパ行きをキャンセルしたそうですし、3月のNYのフェアが一つキャンセルになり、NYのLower East Sideにある若手ギャラリーの31 Grandが年内でクローズするそうです。寂しい話題ですが、このあたりの判断の早さは結構重要なことかもしれません。

ニューヨークマガジンの記事で、マイアミで学んだ7つのことという記事がとても面白かったのでご紹介を。5つ目の「カッティングエッジであることがありきたりになってしまった。」なんてとても面白いと思いました。まあ、7つ目の「次のマイアミはドバイだ」あたりはどうかな、、、と思いますが。

聞きにいけなかったのですが、メインのバーゼルのトークの中でアートクリティックのJerry Saltzが "This is the End: the rising tide of Money Goes out of the Artworld and All Boats are sinking"(これで最後:アートワールドから上げ潮だったお金が引いていき、全ての船は沈みはじめた。)というフェアでのトークという意味でとても刺激的なタイトルのトークを行ったそうで、この辺の懐の深さはさすがだなと思いました。これを聞きにいったアーティストによると、基本的にはアーティストへ向けたトークで、今後しょうがないことだが、生き残れるアーティストは約半分になってしまうだろうから生活を整えながら(先生の仕事を探すとか)、アーティストは死にものぐるいでがんばってくださいというような話だったそうです(伝聞プラスかなり意訳)。悲しいけどまあそういうことなのでしょう。

まあ悲観ばかりしていてもしょうがないので、正月はしっかり休んで2009年のお金が無くなってしまったアート界をそれなりに楽しみにしようと思います。まあ、日本にはそもそも別にアート界にお金が回っていなかったけれど。

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